鍼の起源
鍼の起源は中国の石器時代までさかのぼると言われています。
石を使って体に傷をつけ膿を出していたことがその始まりとされています。
その後紀元前には石鍼が使用され、紀元後 90 年ごろに完成した東洋医学の原典と言われる「黄帝内経」に鍼の刺し方の記載があります。
その後、5~6 世紀ごろに仏教と共に日本に伝わり、長い間、日本の医学の中心とされてきました。
鍼とは
鍼とは、人間の身体にある経穴(ツボ)を鍼で刺し、刺激を与えることで身体を内部から調整する治療法です。
鍼は、症状によって、直径 0.1~0.4mm程度のモノを使用します。
0.1mm は髪の毛程度の直径なのでかなり細い鍼です。
また、尖った鍼ではなく、ペン先のような磁気鍼を使って施術することもあります。
鍼や灸による治療法は東洋医学の一つで、人間の身体を流れる経絡にある経穴と密接な関りがあります。
経絡とは身体を走る鉄道の線路のようなもので、14 の経絡が身体を流れています。
それぞれの経絡が心臓や肝臓など各臓器と大きな関わりを持っており、経絡の所々に経穴という鉄道の駅のようなポイントがあります。
これを一般的にツボと呼んでいます。
大きな経穴もあれば小さな経穴もあり、症状に合わせて効き目のある経穴を鍼で刺激します。
経穴を刺激することで、血行が良くなったり、リンパの流れが良くなったりする他、「気」の流れも良くなります。
東洋医学では、人間の身体には「気」というエネルギーが流れており、この気の流れを良くすることで人間が本来もっている自己治癒力を高められると考えられています。
少し余談になりますが、日本の漢字でも「気」という言葉はたくさん使われていて、昔の人は気の重要性を感じていたのだと思います。
例えば、気の元と書いて「元気」、気が病むと「病気」、生き生きとしている姿を「生気がみなぎる」などと書きます。
これらは、気と身体の関係を表しているように思えます。
気の流れを整えることで身体を健康な状態に保つというのは、先人の知恵だと感じています。
しかし、明治以降、日本の医学の中心が西洋医学になってから、鍼や灸による治療を望む人が少なくなっています。
その理由の一つに治癒するまでの時間が関係しています。
西洋医学はケガや病気を手術や薬を使って治療します。これは病気の原因そのものを取り除いたり、攻撃することで病気を死滅させる治療法です。
例えば、ステロイドなどを投与して病気そのものを攻撃して治すという方法です。
病気の原因を攻撃することよって断ち切るので比較的短時間で回復します。
反対に鍼灸は施術によって自己治癒力を高めて病気に打ち勝つという治療法ですので、治るまでに時間がかかります。
そのため、時間に追われる現代社会では短時間で効果がみられる西洋医学の方が合っているのでしょう。
現代の日本ではなかなか浸透していない鍼灸治療ですが、世界ではその効果が認められています。
世界保健機関(WHO)は、鍼灸治療で次の症状に効果があると認定しています。
神経系 |
神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー |
運動器系 |
関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫) |
循環器系 |
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ |
呼吸器系 |
気管支炎・喘息・風邪および予防 |
消化器系 |
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾 |
代謝内分秘系 |
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血 |
生殖、泌尿器系 |
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎 |
婦人科系 |
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊 |
耳鼻咽喉科系 |
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎 |
眼科系 |
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい |
小児科系 |
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善 |
その他 |
逆子治療、耳鍼(痩身) |
このように、国連の保険機関が非常に多くの症状に有効と認めています。
まずは、鍼灸について知り、治療や健康管理に取り入れてみるのも良いと思います。
西洋医学も東洋医学も優れた医術です。その状況に合わせて使い分けることが最も大切なのだと思います。
鍼の効果
では、鍼の効果について見ていきましょう。
鍼の効果は様々ですが、主だったものをご紹介します。
★痛みを緩和する
身体の様々な痛みに対して、鍼で経穴を刺激することで痛みを抑えるホルモンを分泌し、痛みをブロックします。
そもそも痛みとは脳が感じているもので、負傷した部位が痛みを感じているわけではありません。
脳が負傷した部分が痛いと判断しているので、脳に伝える神経をブロックすることで痛みを緩和します。
★自律神経のバランスを整える
鍼の刺激によってリラックス効果のあるセロトニンなどのホルモンも分泌するため、自律神経のバランスが整い、交感神経、副交感神経の働きがスムーズに行わるようになります。
自律神経は疲れを感じたり、ストレスを感じたりするなど精神面への影響も強いため、自律神経を整えることにより、ストレス性の症状にも効果を発揮します。
★内臓のバランスを整える
そもそも自律神経は身体の司令塔的な役割を担っていて、胃腸等の内臓や血圧もコントロールしている器官です。
自律神経が正常な状態にないと、正常な判断が出来ず、身体の各器官に対してきちんとした指示を送れなくなります。
その自律神経が整うことで内臓のバランスも整います。
★コリやハリを緩和
鍼を刺しツボを刺激することで血液やリンパの流れが良くなり、固くなっていた筋肉がほぐれて柔らかくなり、コリやハリが緩和されます。
当院の詳しい鍼治療の内容については、
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